2019.9.17 閲覧数:348
私は福山平成大学の福祉健康学部で講師としてスポーツに関する授業を持っています。
同学部の依頼を受け、学生さん達のために、「アスレチックトレーナー」短期研修を
企画催行したのがきっかけです。
研修は、「対人口当たりのオリンピックメダル獲得数で世界一」と言われる
スポーツ大国オーストラリアで、シドニーオリンピックに於いて、国の威信をかけて
多額の国家予算が投入されて作られたAIS:Australian Institute of Sports
(オーストラリアスポーツ研究所)と、SMA:Sports Medicine Australia
(オーストラリアスポーツ医科学研究所)を舞台としたとても高度な内容です。
シドニーオリンピックまで両機関の詳細は非公開したが、
同大会の大成功の後、内部が公開されるようになり世界中から視察団が訪れました。
その両機関が初めて海外の大学のために研修プログラムを作成し、受け入れてくれたのが
「福山平成大学アスレチックトレーナー海外研修プログラム」です。
同企画が実現できた裏には、当時オーストラリア女子サッカー代表チームの
監督だったTommy Sermanni の尽力がありました。代表監督はAISの職員でもあり、
Tomの推薦によってAISとSMAの協力が得られることになりました。その後、
SMAと福山平成大学は業務提携合意書に調印し、現在に至るまで13年間に渡って
プログラムは成長を続けています。
この夏、今後の新しい展開についてオーストラリアのスポーツ機関と
協議するため、私は久しぶりに研修に同行しました。
毎回リピーターのあるこのプログラムは毎年少しづつ内容に変化を加え、
今年も、日本と質の異なるテープを使ったテーピングテクニックや、
パソコンを使用して交感神経と副交感神経の働きをチェックして回復力を測る方法、
キャンベラ大学でのコーチングテクニック、プロのラグビーチーム訪問、
リハビリの最新機器、高地トレーニングのための宿泊施設や、運動後の回復センター等、
様々な機関を訪問して実際にアスリートが機器を使用している場面を見ながら
学習を進めました。
研修の様子を写真でご紹介しましょう。
テーピングで使用しているテープは大変強度が強く、コツをつかまないと
指では容易に切れません。オーストラリア人の強大な筋肉をサポートするには
この位の強度が必要なんだろう、と。
参加者の心拍数を実際に測定、コンピューターソフトで解析し、
それぞれの回復力の特徴を把握します。このシステムは実際のオリンピック
選手達にも使われていて、毎朝起床と同時にデータがチームの
スポーツドクターの元に送られ、その日のトレーニングメニューを
調整するそうです。
AISのゼログラビディー(重力ゼロ)呼ばれるランニングマシーンです。
足に傷害を負ったアスリートがリハビリする際に、腹部から下の
バルーンの中に空気を注入して体全体を持ち上げ、
足にかかる重力を調整して徐々に負荷を上げて行きます。
AISの室内ランニングトラックの横にはハイスピードカメラが設置されており、
アスリートの走るフォームを記録、解析します。
またトラックの床面には測定装置が埋め込まれていて、アスリートが
地面を蹴る強さも測定されます。
AISのウエイトトレーニングルームです。それぞれのアスリートが
トレーナーたちと作成したメニューに従ってトレーニングしています。
運動後の回復センターです。運動機能の回復と共に、その回復の度合いも
測定されてトレーニングメニューの調整に役立てられます。
キャンベラ大学でサッカーのコーチング方法を実際に体験してみます。
地元のプロラグビーチーム、Grumbiesを訪問してプロ選手に
内部を案内してもらいました。
トレーニングルームにはそれぞれのポジションによってトレーニングする
内容が指示されており、その日のトレーニングでの最も良い数値を
各自壁に掲示してあるデータシートに書き込むようになっています。
瞬発力のデータでは大型選手の10メートルダッシュの速さに驚かされます。
オマケの一枚です。この研修をAISとSMAに依頼してくれた、
元オーストラリア女子サッカーチームの代表監督だったTom Sermanniと
シドニーで再会することができました。
彼は現在、ニュージーランドの女子サッカー代表チームの監督であり、
先日のフランスワールドカップにもチームを率いて出場しています。
恐らくニュージーランドに居るだろうと思いながら連絡をしたところ、
「今からシドニーに帰るところだ」と、搭乗直前の空港ゲートから
返信があり、シドニーで再会することができました。
今まで女子サッカーワールドカップは7回開催されています。
Tomはこれまでオーストラリア、カナダ、アメリカそしてニュージーランドと、
4か国の代表チームを率いて、5回のワールドカップに出場しています。
2020東京オリンピックには、ニュージーランドの出場は決定しており、
Tomは来年日本にやって来ます。次は日本で再会することを約束して、
駆け足の私のオーストラリア出張は終わりました。
アメリカンドリーム
吉川浩司